断熱性能は「性能×厚み」で決まる

前回まで、敷地の良さを読み取り、建物を配置していくヒントを見てきましたが、今回から数回にわたって建物の温熱性能について考えていきます。

温熱性能の中でも最も基本となる断熱性能は心地よさの下地をつくる大切な性能です。冬は熱を逃がさず、夏は熱を入れません。保温性能と言い換えた方がイメージしやすいかもしれません。
今回は断熱性能の基本要素である熱貫流率U値の計算をマスターします。計算を通してそれぞれの意味合いの理解を深めましょう。

断熱性能は素材の性能(熱伝導率)と厚みで決まる

いくら性能の良い断熱材であっても薄ければ、断熱性能は高くありません。それを判断するために、今回は3つの要素を覚えていただきます。

断熱性能を表す3つの要素とは「熱伝導率λ」、「熱抵抗R値」、「熱貫流率U値」です。
これらの用語を整理して、断熱材を選択する基準を確認します。

熱伝導率λ(ラムダ) 単位 [W/m・K] = [W/(㎡・(K/m))]

材料の厚さ1m、温度差1℃、1㎡あたりの熱の伝わりやすさをWで示します。厚さが1m当たりなので、同じ条件で性能を比較できます。
熱伝導率λの値は省エネ基準の技術情報やカタログに示されています。

熱抵抗R(アール)値 単位 [㎡・K/W]

厚さを考慮して、温度差1℃、1㎡あたりの材料の熱の伝わりにくさを示します。厚みを熱伝導率で割ることで求まります。数値が大きいほど熱を伝えません。

熱抵抗R値[㎡・K/W]=厚さ[m]÷熱伝導率λ[W/m・K]

熱貫流率U(ユー)値 単位 [W/㎡・K]

厚さを考慮して、温度差1℃、1㎡あたりの材料の熱の伝わりやすさをWで示します。熱抵抗の反対の意味合いですので、熱抵抗の逆数を取ります。数値が小さいほど熱を伝えません。

熱貫流率U値[W/㎡・K]=1÷熱抵抗R値[㎡・K/W]

熱抵抗や熱貫流率の計算が理解できれば、高性能グラスウール16kg100mmと同じ性能を別の素材で実現するときの厚みも計算できますよね。

木材だと316mm。かなり分厚いですが、丸太ログハウスだとこのくらいはありそうです。
コンクリートは4M以上と厚すぎて現実的ではありません。
一方、高性能断熱材のフェノールフォームでも30㎜と薄ければ、木材にもかなわないのです。

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代表的な建材や断熱材の性能を表にまとめてみました。

皆さんが普段使っている素材の性能はどのくらいでしょうね。

准教授 辻 充孝

※「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
各部位の熱貫流率U値の計算方法は、2021年5月号(第11回)。
計算演習や、このブログで書ききれない内容も書いてます。
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