あなたは人生の大半をどこで過ごしていますか?(バウビオロギー・コラム)
「バウビオロギー」という言葉を、これまでに聞いたことはあるでしょうか。
日本ではまだ耳馴染みのない言葉ですが、これからの日本の家づくり、暮らしにとって、とても大切な指標になる学問です。
今回は「バウビオロギー」の基本的な考え方を、紹介したいと思います。
私たちは、人生の90%を「室内」で過ごしている
「私たち人間は、平均して人生の何パーセントを室内で過ごしているでしょうか?」
家や職場にいるとことを考えるとなんと約90%(あるいはそれ以上)とも言われています。
私たちは「自然の中で生きたい」と願いつつも、1日の大半、そして人生のほとんどを「建物」という人工的な箱の中で眠り、働き、暮らしているのが現実です。
食べるものや飲む水にこだわる方は多いですが、私たちが24時間、体内に最も多く取り入れているのは「室内の空気」です。
そう考えると、私たちが過ごす「部屋の環境」が、私たちの身体や心にどれほど大きな影響を与えているか、想像がつくのではないでしょうか。
バウビオロギー =「建築生物学」という視点
この「人と住まいの関係性」を徹底的に追求したのが、1960年代にドイツで生まれた「バウビオロギー(Baubiologie)」です。
言葉を分解すると、とても分かりやすいです。
バウ(Bau) = 建築・建てること
ビオ(Bio) = 生命・自然
ロゴス(Logos) = 学問・言葉
日本語では「建築生物学」と訳されます。
単に「頑丈な建物を安く建てる」という工学的な視点ではなく、「人間という生命体が健康に、心地よく暮らすために、建築はどうあるべきか」を、自然界の循環(生態系)の一部として考える、とても優しく、かつ全体的な学問です。
家は、私たちの「第三の皮膚」である
バウビオロギーを象徴する有名な言葉に、「家は人間の第三の皮膚である」という考え方があります。
第一の皮膚:私たちの本当の肌
第二の皮膚:私たちが身にまとう衣服
第三の皮膚:私たちが包まれる「家」
皆さんは、ナイロンやポリエステル100%の、全く汗を吸わない・通気性のない服をずっと着ていたいと思うでしょうか? きっと、蒸れて肌が荒れてしまうはずです。だからこそ、肌に触れる衣服にはオーガニックコットンやリネン、ウールなどの自然素材を求めますよね。
家も全く同じです。
現代の日本の住宅は、気密性を高めるためにビニールクロスや化学物質を含む建材、接着剤でガチガチに固められがちです。これでは、家が「息をできない状態」になってしまいます。
バウビオロギーが目指すのは、衣服のように優しく人間を包み、湿気を吸放湿し、有害な化学物質や不自然な電磁波を遠ざけ、自然な光や風を取り入れる「呼吸する家」です。
単なる「省エネ性能」を超えた、本当の心地よさへ
最近の住宅業界では「高気密・高断熱」や「ZEH(ネット・ゼロエネルギーハウス)」といった、数値的な省エネばかりが注目されています。
もちろん、エネルギーを無駄にしないことは地球環境のために大前提として大切です。
しかし、数値(電気代や断熱性能の等級)だけを追い求めて、室内の空気質がギスギスしてしまったり、住む人が体調を崩してしまっては本末転倒です。
バウビオロギーでは、家づくりにおいて「健康(住む人の生命)」「持続可能性(地球環境)」「造形(空間としての美しさや愛着)」の3つのバランスが均等に取れていることを最も重視します。
環境に良くても、住んでいて頭が痛くなる家はバウビオロギー建築ではありません。
健康に良くても、デザインが不細工で愛着が持てない家も、長く大切にされない(サステナブルではない)ため、やはりバウビオロギー建築ではありません。
このバウビオロギーの思想(バウビオロギーの25の指針という具体的なガイドラインがあります)をベースに置きながら、日本の気候風土に合った木造建築や温熱設計の実践・提案を行ってくべきです。
このコラムを通じて、バウビオロギーの視点から、
「どんな素材を選べば空気質が良くなるの?」
「心地よい光や照明のバランスって?」
「見落とされがちな室内の電磁波対策は?」
といったテーマを、皆さんの明日からの暮らしに役立つヒントとして、分かりやすく掘り下げていきたいと思います。
皆さんもぜひ、ご自身が「人生の9割を過ごす場所」をどんな空間にしたいか、一緒に考えてみませんか?





