持続可能な環境の形成「バウビオロギー25の指針」(バウビオロギー・コラム)

前回までは、住まいの空気や熱といった「快適な室内環境」、「建材の選択」そしてそれを形作る「空間造形」についてお話ししてきました。第4回となる今回は、バウビオロギー25の指針の第4グループである「持続可能な環境の形成」について解説します。

持続可能な環境の形成

私たちの家は、部屋の中だけで完結するものではありません。地域、そして地球という大きな「生命の循環(生態系)」の一部です。ここでは、「環境に優しいエコハウス」を単なる省エネ数値の追求としてではなく、暮らしの豊かさや未来へどうつなげていくか、という視点で5つのルールを見ていきましょう。

指針16:エネルギー消費を最小限にし、再生可能なエネルギーを利用する

有限である化石燃料(石油や石炭)や、安全面にリスクを伴うエネルギーに頼るのではなく、太陽光、バイオマス、地熱など、自然の営みから生まれるエネルギーを暮らしに取り入れます

日本において「省エネ」、「再エネ」というと、真っ先に高性能エアコンやエコキュート、LED照明などの「高効率設備」、「太陽光発電(PV)パネルを屋根に載せて売電する・消費する」という機械的な仕組みがイメージされがちです。しかしバウビオロギーにおいてまず最優先されるのは、設備に頼る前段階の「パッシブデザイン(建物の工夫で太陽の光や熱、風をそのまま活かすこと)」です。 例えば、南面に適切な大きさの窓を設けて冬の太陽熱を室内に採り込み、蓄熱する。夏は深い軒(のき)や庇(ひさし)、落葉樹などを利用して厳しい日射を遮る。そして、地域に吹く心地よい卓越風を室内に通す。こうした「建築そのものの工夫」を徹底した上で、どうしても足りないエネルギーを太陽光発電や薪・ペレットストーブ(バイオマス燃料)などの再生可能エネルギー設備で補う、という順番の組み立てが日本の四季を豊かに過ごす鍵となります。

指針17:新築、 改修にあって、 環境へのネガティブな影響を回避する

人間が家を建てて暮らすということは、多かれ少なかれ、そこにあった自然の生態系を改変することを意味します。バウビオロギーでは、人間だけでなく周囲の動植物も同じ地球の住人(生態系の一部)として捉えます。土壌を過度にコンクリートで覆い尽くして雨水の循環を止めたり、地域の動植物の生息地(ビオトープ)を奪ったりするような「ネガティブな影響」を最小限に抑える計画が必要です。

日本の都市部や分譲地では、敷地いっぱいに建物を建て、庭や外構(エクステリア)を全面コンクリートやアスファルトで固めてしまうケースが少なくありません。これは雨水が地中に浸透するのを妨げ、都市型洪水を誘発する原因になるほか、夏場に周囲の気温を上げるヒートアイランド現象を悪化させます。 家を建てる・直す際は、敷地内に少しでも土のままの場所を残し、地域の在来種(木や草花)を植えて鳥や昆虫が集まる庭をつくる。また、基礎や擁壁の工事にあたっても、周囲の地下水脈を遮断しないような配慮をする。新築時だけでなく、リフォーム(改修)の際にも、こうした「庭や周辺環境の自然の再生」を同時に行う視点が日本の街並みや生態系を守るために極めて重要です。

指針18:天然資源は有限であり大切に利用する。動植物を保護しつつ

地球の資源は有限です。現代の大量生産・大量消費型の建築は、資源を「使い捨て」にする傾向がありますが、バウビオロギーでは、資源を「未来の世代から借りているもの」と考えます。そのため、できる限り再生可能な材料を選び、解体後のリサイクルや自然への還りやすさ(生分解性)を考慮することが不可欠です。
木材を伐採することは、単に材料を得ることではありません。そこには、数多くの動植物が生きる「生息地(ハビタット)」があります。乱開発や持続不可能な伐採は、生物多様性を破壊し、やがては人間自身の住環境の質をも低下させることにつながります。

日本は世界有数の木材輸入国ですが、遠方から運ばれる材料は輸送過程で大量の二酸化炭素を排出します。また、伐採地での環境負荷が見えにくいという側面もあります。「顔の見える木材」を選ぶことが重要です。地元の山林から切り出された木材を使うことは、森の健全な間伐を促し、日本の荒れた山を再生することに直接貢献します。地元の材木店や製材所と繋がりを持つことは、地域経済を循環させる「ソーシャル・エコ」の観点からも非常に有効です。
日本では建物の寿命が短く、頻繁に解体と建て替えが行われています。これが天然資源の浪費の最大の原因です。「スクラップ・アンド・ビルド」から脱却し、「可変性のある家」をつくることです。将来の家族構成の変化に対応できる間取りや、メンテナンスが容易で長持ちする構造(伝統的な木造軸組工法など)を採用することが、結果的に「天然資源を最も節約する」ことになります。
動植物を保護するという視点において、住宅の防腐・防蟻処理に使われる化学薬品は、土壌や水系にネガティブな影響を与える可能性があります。日本の高温多湿な気候では防蟻対策が欠かせませんが、強力な薬剤を撒くのではなく、「設計的な工夫(基礎の通気確保や軒の深さなど)」による物理的な防蟻を優先させます。どうしても必要な場合は、ホウ酸などの天然鉱物由来の環境負荷が低いものを選ぶことで、地域の動植物への影響を最小限に抑えることができます。

指針19:地域固有の建築工法を優先し、エコ収支の観点から最もふさわしい材料や経済循環を選ぶ

世界のどこからでも同じ均一な建材を安く運んでこられる現代ですが、その長距離輸送(ローカルからグローバルへの依存)は、大量の輸送エネルギー(フードマイレージならぬ「ウッドマイレージ」など)を消費し、地球環境を損ないます。その土地の気候風土に適した「地域の材料(地場産材)」を使い、地域の職人による「伝統的な手仕事や工法」で建てることは、輸送負荷を減らす(エコ収支が良い)だけでなく、地域経済を循環させ、美しい文化的景観を次世代へ継承することにつながります。

現在の日本の住宅の多くは、北欧や北米、東南アジアなどから輸入された外材や、海外製の既製品建材に依存しています。一方で、日本の豊かな森林から切り出される国産材(スギやヒノキなど)の活用や、地域の左官職人、大工職人の技術を活かす機会は減少傾向にあります。 私たちが地域の木を積極的に使うことは、手入れ不足で荒廃しつつある日本の山(人工林)を健全に健やかに保ち、土砂災害を防ぐことにも直結します。地元の木を使い、地元の職人の手によって建て、メンテナンスも地域で完結させる。「顔の見える家づくり」を選ぶこと自体が、最も持続可能な環境形成のアクションなのです。

指針20:質の良い飲料水に注意をはらう

水は、あらゆる生命の根源であり、私たちの身体の約6〜7割を占める最も重要な要素です。バウビオロギーでは、家の中に引き込まれる「水」の質にも強い注意を払います。単に水道法で定められた安全基準をクリアしているかという視点だけでなく、自然の本来のエネルギーやミネラルバランスを持った、細胞が喜ぶ「質の良い飲料水」を日常的に確保することを目指します。

日本は世界でも稀に見る「水道水がそのまま飲める国」であり、非常に恵まれたインフラを持っています。しかし、その安全性を担保するために、水道水には諸外国に比べても比較的多くの塩素(カルキ)が投入されています。また、高度経済成長期に埋設された古い水道本管の鉛の溶出や、集合住宅の受水槽の管理状態、さらには宅内配管(塩ビ管や架橋ポリエチレン管からの化学物質の微量溶出、古い亜鉛メッキ鋼管のサビなど)による水質低下のリスクも潜んでいます。 また、お風呂やシャワーの塩素も皮膚や呼吸から体内に吸収(経皮吸収)されるため、家全体の水を一括で浄水するシステム(セントラル浄水器)を検討することも、バウビオロギー的なアプローチとして非常に有効です。

まとめ

『持続可能な環境の形成』に掲げられた5つの指針を見つめ直すと、バウビオロギーの思想が決して「人間だけの健康」を目指した利己的なものではないことがよく分かります。

私たちが選ぶ1本の柱、1枚の壁紙、そして日々のエネルギーや水の使い方が、地球の裏側の環境や、私たちの足元の土壌、山の豊かさ、地元の職人たちの暮らしにまで繋がっています。

「環境に良い選択をすることが、結果として自分たちの暮らしを最も豊かで心地よく、美しいものにしてくれる」

そんなワクワクするような家づくりを、ここ日本の気候風土に合わせて、皆さんと一緒に紡いでいきたいと考えています。

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日本バウビオロギー研究会 HP

通信教育講座 バウビオロギー

 

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