日本の風土と共生し、安全・安心で長く住み継ぐ[日本版指針 私案」(バウビオロギー・コラム)
これまで、ドイツのバウビオロギー・サステナビリティ研究所 (IBN)の25の指針を見てきましたが、これらに加え、日本の気候風土に合わせた新たな考え方も必要ではないかと以前から考えています。
過去に、私案を紹介しましたが、その後も考え続けていました。改めて25の指針を見返したあとで、改めて整理したのが今回の私案です。考え続けていくことが大切です。
日本の風土と共生し、安全・安心で長く住み継ぐ
日本指針1:高温多湿な気候を活かす中間領域を設け、建物を守る防湿・調湿設計を行う
軒下、縁側、土間といった日本古来の「中間領域」は、直射日光を遮り、風を通すことで、エアコンに頼りすぎない涼しさを生み出します。また、適切な防湿・調湿は、カビや腐朽から建物を守り、住む人の呼吸器系の健康を維持します。
近代の建築は気密性を優先するあまり、湿気を内に閉じ込めがちです。漆喰や無垢材など、調湿性の高い素材を適材適所に用い、湿気が滞留しない通気層の設計を徹底することが、建物寿命を延ばす鍵となります。
日本指針2:自然災害(地震・水害・火災)に備え、命を守り、住み継げる構造とす
地震や台風、豪雨、火災といった災害は、日本では避けられないリスクです。単に「壊れない」建物というだけでなく、万が一の際にも「家族の命を守り、確実に避難できる」構造であることが、居住者の心理的な安心感に大きく寄与します。特に地震に対しては、適切な耐震・制振設計が健康な暮らしの基盤となります。
構造の強さだけでなく、「災害後に自分たちで修復し、住み続けられるか」という視点が重要です。複雑すぎる工法や、独自の高価な部材のみに頼ると、災害時に修理が困難になる場合があります。地元の材料を使い、大工さんが手仕事でメンテナンスできる伝統的な知恵を取り入れた工法を選ぶことが、長期的な安心と、家を長く住み継ぐことにつながります。
日本指針3:室内間の温度差をなくし、ヒートショックを防ぐ温熱環境を確保する
日本の住宅で冬場に多く発生するヒートショックは、深刻な健康被害をもたらします。部屋ごとの温度差をなくし、家中が均一に暖かい環境は、高齢者だけでなく全世代の免疫力を保つための基礎体力づくりです。
断熱性能を上げることは必須ですが、同時に「熱の蓄熱」にも注目してください。断熱だけでは夏に暑くなりすぎることがあるため、壁や床に熱を蓄える素材(タイル、土壁など)を組み合わせて、室温の急激な変化を緩やかにする「温度のバッファー」を作ることが大切です。
日本指針4:長寿命化に寄与する材料を選び、維持管理・更新が容易な工法を採用する
資源を大切にするためには、家を「使い捨てる」文化からの脱却が必要です。メンテナンスを前提とした材料選びと、配管や設備の更新が容易な工法は、世代を超えて家を引き継ぐことを可能にします。
「隠さない」デザインが有効です。配管や電気配線を壁の中に完全に埋め込むのではなく、メンテナンス時にアクセスしやすい設計にすることで、将来のリフォーム費用を抑えられます。また、環境負荷が低く、古くから親しまれている木材や石材は、修繕が容易というメリットもあります。
日本指針5:「わび・さび」の美意識を重んじ、経年美化を楽しむ
新築の輝きだけを求めるのではなく、年月を経て木の色が深まり、土壁が落ち着く姿を愛でることは、精神的な豊かさそのものです。使い込むほどに味が出る住まいは、住む人の愛着を深め、結果として建物の維持管理を丁寧にする意識を育みます。
「汚れ」と「味(深み)」を区別する感性が大切です。新建材は経年で「劣化」して見えがちですが、自然素材は適切に手入れをすれば「熟成」して美しくなります。設計段階から、年月とともに風合いが変化することを説明し、住まい手がメンテナンスを「楽しみ」として捉えられるような信頼関係の構築が重要です。








