浄土寺浄土堂(兵庫県)
建物名 | 浄土寺浄土堂 | 住所 | 兵庫県小野市浄谷町2094 |
設計者 | 俊乗房 重源 | 施工者 | - |
建築年 | 1194年 | 訪問日 | 2025/1/2他数十回 |
国宝「浄土寺浄土堂」は、外観はそっけない方形の建物でどうということの無い建築に見えます。
ですが、内部空間(撮影禁止)の素晴らしさは秀逸です。
4本の大きな柱の中央に快慶作の国宝・阿弥陀三尊立像(全長5.3m)た立っています。
堂内は天井がなく朱に塗られた構造躯体や垂木が表されています。
春分、秋分あたりの夕方になると西の蔀戸から西日が射し、床に反射して朱に塗られた垂木がなどで赤く染まっていきます。
この季節や時間の変化が構造的な意匠と相まってダイレクトに感じられる空間が私の建築の原点になっています。
実家が近くということもあり、子供のころから写生大会や遠足で何度も訪れています。現在も帰郷するたびに寄っています。
浄土堂に寄ったらぜひ堂内を見ていただきたいです。
さて、浄土堂は、平氏の兵火によって焼失した東大寺(2代目)を再建するために、大勧進職となった俊乗房重源によって東大寺再建の経済的拠点として播磨別所を開き、その中に浄土寺を建立しています。
大仏様(だいぶつよう)という建築様式を用いた建造物で、東大寺南大門とともに大仏様を伝える数少ない建物です。
大仏様は、巨木を利用した合理的な建築ですが、これ以降は巨木が確保できないことからこの様式はほぼ建てられていません。2代目の東大寺も焼失し、現在、大仏様で建築された寺院は浄土堂だけになっています。
そんな大仏様の片鱗は外部からでも見ることができます。
いたるところで合理的な構造や劣化に対する対策が見て取れます。
まずは、垂木の小口が鼻隠し板によって隠されています。
多くの寺院建築では垂木の小口を白く塗り意匠的に見せていますが、小口は吸水しやすく劣化の原因になりやすい。そのため、浄土堂では保護も兼ねて鼻隠し板が設置されています。
また、隅の柱を見ると、大きな丸柱に組み物が差されており(差し肘木)、柱は屋根まで通っています。
差すことで深い軒先を支える強度を確保しています。
また桁の途中から太い垂木が伸びていますが、同じだけ内部にも伸びており(遊離尾垂木)天秤のように桁を支え、こちらも深い軒を支えています。
次に、屋根の隅を見てみましょう。
垂木が放射状に広がり(隅扇垂木)、2点で受けていることが分かります。
構造的にも理にかなっており、屋根の荷重をしっかり支えています。
多くの垂木は屋根の先端と直行して設置されるので、隅部では、1点しか桁に接しておらず下から貼っているだけのものもあります。
こちらが西の蔀戸です。
季節、時間によって開け放たれ内部に光を導入します。
しかも少し高台になっているため、当時は周辺の田んぼなどに反射した西日も取り込まれていたのではと考えられています。
シンプルな建物にさまざまな工夫が詰まった浄土堂。
一度は訪れる価値があります。