エネルギー(「風の谷」という希望 )

エネルギー (「風の谷」という希望)

先日紹介した名著「風の谷という希望」はこれからの重要な指針が多くの分野にわたって書かれています。自分の備忘録として要点を紹介していきます。

第Ⅲ部の6つの領域から「人間の活動を支えるエネルギー」

・エネルギーの課題
供給コストは人口に反比例して増大

・大規模な天災(噴火や地震など)でほぼすべての基盤インフラが止まる見込み
電力、通信、上下水道、鉄道、道路、人の移動、物資、建物は大きく影響を受ける
特に電力供給の停止の影響が最も大きい

・エネルギーについて
エクセルギー(有効エネルギー)の減少
変換効率はエネルギー源と変換装置で大きく異なる。例えば内燃エンジンは14~26%だが、EVモーターは50~80%。電気は万能で変換効率が高い
エネルギーには2種類ある。蓄積されたストック型と日々発生するフロー型。ストック型では石油はエネルギー密度が高い
エネルギー源の多くは地理的に偏在している
太陽のフローエネルギーは人類が使うエネルギーの約7500倍のポテンシャル
多くのエネルギー源は太陽エネルギーに期限を持つ

・大切なのは需要の実態を把握すること

日本の用途別内訳は家庭15.8%、運輸(人)12.6%、運輸(モノ)9.7%、企業・事務所他61.9%
都道府県別の1人あたりのエネルギーをみると4倍近い開きがある。最大の要因は製造業。
製造業を除くと必要なエネルギー量は疎空間で都市の2倍程度。このうち6割が運輸(人やモノ)。
さらに6割がトラックなどの貨物自動車。
家庭部門では気候条件による地域差が存在
疎空間における主要なエネルギー需要は、人とモノの移動、空調、生活とオフィス、生産(農林水産+建設+製造)の4つ

エネルギー供給のあるべき姿の5つの条件

1.供給が高価すぎないこと
2.供給が安定的であること、かつ現実的な範囲で低環境負荷
3.レジリエンスがあること(十分な蓄電機能を持ったNOグリッドや近隣で融通しあうマイクログリッド供給をメインにするべき
4.景観融和であること
5.消費サイドが十分にスマートで環境負荷が極力少ないこと。
熱は熱で使うこと
化石燃料の利用を必要最低限に。つまりバイオマス利用も念頭に
移動手段を小型化、EV化
空調のスマート化(断熱強化、日射熱制御)

具体的な備え

  • 消費のスマート化をできる限り推進(断熱化、バイオマス利用など)
  • 小~中型の発電設備を備える(小水力、ディーゼル、太陽光など)
  • エネルギー貯蔵力(薪、蓄電装置など)
  • 小型発電設備と蓄電設備をつないで助け合うマイクログリッド整備
  • 発電・配電モジュールをできる限り自己保守可能に

温暖化抑制のために

・地下からの炭素の持ち込みを減らす(バイオマス利用なども)
・地表からの温室効果ガスの発生を抑制する(土壌からの放出に留意)
・大気中の温室効果ガスを除去する
・アルベド(反射・放射)を増やす
・入りを減らす(太陽光の透過率制御)
ただし、地球システムの介入は繊細な制御が可能であり可逆的であること

・都市から離れたリモートな地区では、ディーゼル発電が比較的小規模で安定した電力供給

マイクログリッドの経済性は大規模電源のスケールメリットにはまだ及ばない。(離島ではあり)

自然エネルギー系の多くは、蓄電技術とセットでその価値を最大化できる

段階的な実現

・経済性(小規模から始め、設置・運用コストの最適化を図る)
・安定供給(天候や時間帯の発電量の変動を相互に補完する仕組み)
・レジリエンス(災害時の機能維持について検証を行う)
・景観融和(景観との調和について住民との対話で改善を重ねる)
・スマートな消費(IoTによる需給制御システムの効果を実証)

・4つのエネルギー源への期待
1.地熱、2.潮汐力、3.超小型モジュール炉、4.景観融和型の風力

通信は衛星通信が現実的な選択肢

EVは単なる移動手段ではなく、高性能なコンピュータを搭載した移動式エネルギーステーションになりうる

 

図版やデータが豊富で読みやすく説得力がある。

過去の「風の谷」という希望の記事は

自然と森、林業(「風の谷」という希望 )
「風の谷」という希望(安宅和人)

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