栗林公園 掬月邸(香川県)
建物名 | 栗林公園 掬月邸 | 住所 | 香川県高松市栗林町1丁目20-16 |
設計者 | 伊藤要太郎 | 施工者 | - |
建築年 | 1742年 | 訪問日 | 2025/3/28 |
国の特別名勝に指定されている栗林公園内にある掬月邸。
栗林公園の前はフェリー乗り場に向かう途中で何度か通っていましたが、藤森さんの「木造文化遺産」の書籍で紹介されていたことを思い出して立ち寄りました。
6つの池と13の築山があり、75haある日本一の広さを誇る公園自体も素晴らしく、歩くたびに景色がコロコロ変化し飽きさせず、次はどんな風景がみえるのかワクワクしながら散策できます。石壁(赤壁)

讃岐質安山岩の石壁(赤壁)。三国志などの中国古戦場からが名前の由来

ハスの池。松以外は手入れをせず自然のままとのこと。実生でまたきれいな蓮池になるよう。
その中にはいくつかの建物がありますが、今回のお目当ては「掬月邸」。抹茶とお菓子をいただきました。
名前の由来は、「水を掬すれば 月手に在り(現代語訳:湖面にうつった月を見て、両手 で水を掬えば月が手に取れるようだ)」という中国唐時代の詩にあるとのこと。つまり、掬月亭は夜を楽しむための 建築としてつくられたと考えられていますが、日中でもその魅力は伝わります。
最も目を引くのが、その開放性です。開放性を実現しているのが、建具の工夫です。
基本は障子ですが、風雨はしのげません。板雨戸が必要になりますが、仕舞うには戸袋が必要になります。戸袋をつけるとどうしても壁ができ視界を遮ってしまいます。
そこで考え出されたのが、雨戸をコーナー部分で回転させ一か所の戸袋に集めるという方法です。
建物のコーナーを見ると回転のための工夫が見て取れます。
128枚の板戸があるといいます。そのため、数か所ある戸袋も分厚いです。
この建具の工夫で軽快な建物が実現しています。
それを補佐するのが、室内の壁や天井の仕上げです。
通常は土壁に漆喰を塗ったりして仕上げますがそれでは、重量が重くなってしまいます。
そこで掬月亭では和紙が貼られた襖のような仕様。よく見ると紙を貼り合わせた線が見えます。
その他ディテールも遊び心があり見ていて飽きません。
格式ある書院造りでありながら、桂離宮の数寄屋造りの楽しさも持ち合わせています。
池に張り出した縁側は手摺も低く抑えられ、視界を邪魔しません。