札幌聖ミカエル教会(北海道)アントニン・レーモンド設計
| 建物名 | 札幌聖ミカエル教会 | 住所 | 北海道札幌市東区北19条東3丁目4-5 |
| 設計者 |
アントニン・レーモンド
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施工者 | 竹中工務店 |
| 建築年 | 1960年竣工 | 訪問日 | 2026/3/28 |
北の大地に息づく、和紙の光と丸太の祈り
まだ道端に雪が少し残る早春の午後、静かな住宅街の中にその教会はひっそりと佇んでいました。
日本近代建築の先駆者、アントニン・レーモンドが手がけたこの建築は、北海道に唯一現存する彼の作品であり、訪れる者を優しく包み込むような、圧倒的な静謐さに満ちています。
■ 力強さと温もりが同居する「構造の美」
扉を開けて内部に入ると、まず目を奪われるのは天井に力強く組まれた丸太の小屋組みです。
これはレーモンド建築の特徴である「鋏状(はさみじょう)トラス」と呼ばれる構造で、素材には北海道産のトドマツの丸太が使用されています。
1960年の竣工から歳月を経て、深みを増した丸太の経年変化が、空間に重厚なリズムと温もりを与えています。
この剥き出しの構造体そのものが意匠となり、祈りの場としての力強さを象徴しているようです。
■ 和紙とレンガが織りなす、柔らかな光の粒子
この空間を特別なものにしているのは、ファサードのガラス面に施された和紙のモザイクです。
レーモンドの妻、ノエミ夫人によってデザインされたこの和紙は、外からの光を柔らかく拡散させ、ステンドグラスとはまた異なる、奥ゆかしく幻想的な光景を作り出しています。
また、壁面のレンガに設けられたスリットからも、細く柔らかな光が差し込み、祭壇へと視線を導きます。
雪解けの季節特有の、少し冷たくも透明感のある光が和紙やレンガを透過し、誰もいない礼拝堂の静寂をよりいっそう際立たせていました。
■ 地域と手仕事が結実した、沈黙の聖堂
建物全体に使われているレンガや砂利も北海道産のものであり、施工を担った竹中工務店の職人たちによる丁寧な手仕事の気配が随所に宿っています。
レンガのバットレス(控え壁)は、積雪荷重に耐えるための合理的な構造でありながら、その姿はどこか牧歌的で、北国の風景に深く根ざしています。
構造、光、素材、そして祈りの心が、一切の無駄を省いた「簡素な美」として結実したこの場所は、建築が単なる建物ではなく、人々の想いを守り続ける装置であることを静かに教えてくれます。
雪の残る庭を後にする時、和紙を通した柔らかな余韻がいつまでも心に残る、至福の建築体験でした。



















