夏の湿気は換気から大量に入ってくる?(湿気のはなし①)
今回と次回は少しマニアックな湿気のはなし。
夏の湿気は換気で大量に入ってきます。
「ぜんぶ絵でわかる エコハウス」164ページで図解していますが、0.5回/hの換気回数で1日に数十リットルの水蒸気が入ってくることもあります。
例えば、
室内が28.0℃40%の時、水蒸気量は10.89g/m3の水蒸気量、
外気が27.0℃、74%(東京の8月の平年値)の時、水蒸気量は19.06g/m3です。この時期の平均値なので近年はもっと蒸し暑い日や時間もあるでしょう
つまり1m3の換気で差分の8.17gの湿気が入ってくることになります。
ではどのくらい換気しているのでしょうか。
シックハウス法の施工で1時間あたり0.5回の換気ができる機械の設置義務化が行われています。動かす義務はないですが通常0.5回/hの換気がされている家が多いと思います。(0.5回/hの根拠は後述の補足)
32坪の住宅で天井高さ2.4mの場合、気積は254.4m3ありますので、0.5回/hだと、1時間で127.2m3空気が入ってくることになります。
そうなると、8.17g/m3×127.2m3/h×24h=24,941g。
つまり約25リットルもの湿気が入ってきます。
つまり、室内を28℃40%で維持するには25リットルも除湿しないといけません。すごい水蒸気ですね。
ちなみに下記の図のような冬期は10L以上もの加湿が必要になります。
これは、室内を心地よい環境(今回は28℃40%)に保とうとした場合です。
近年の高断熱・高気密住宅が増えてきたことでこの室内環境(温度や湿度)の実現が可能になってきていました。
湿気なんか気にしないという方は成り行きの湿度(高湿)になってしまいます。
●換気回数0.5回/hの意味
清浄な空気を判断する指標に二酸化炭素濃度があります。
換気が滞ると呼吸などで室内のCO2濃度がどんどん上がってきます。
適切な換気の目安として1,000ppm以下を目標にしましょう。
CO2の許容濃度の1000ppmとは、1m3中に0.001m3(1L)のCO2ということ。
ちなみに外気は400ppm(0.0004m3)程度。緑に囲まれた場所は少ないし、都市部は多めと立地によって変わります。
人の呼吸から排出されるCO2は安静時(就寝時)の0.01m3/h・人(10L)から重作業の0.09m3/h・人(90L)まで様々ですが、一般的には0.02 m3/h・人(20L)で考えます。
必要換気量(m3/h)= 室内発生のCO2(m3/h)/(室内CO2許容濃度(m3/m3)-外気CO2濃度(m3/m3))
で求められますので、1人あたりの必要換気量は
0.02÷(0.001-0.0004)=33.33m3/h
例えば、8畳(天井高さ2.4mで室容積32m3)の寝室に2人で寝ているとすると、
安静時なので1人あたり必要換気量は半分の16.66m3/h。2人で倍の33.33m3/h。
ちょうど1回/hの換気回数が必要になります。
寝室を閉め切って寝ていると、0.5回/h想定の機械換気だけでは明け方にはCO2濃度が上がってしまっているわけです。
また、石油ストーブなどの開放型燃焼器具は、人の呼吸の10~20倍のCO2を発生させますので基本的に使用を控えるべきです。
1人当たりの必要換気量は33.33m3/hなので、4人家族では約133m3/hの必要換気量になります。
120㎡の住宅で天井高さを2.4mとすると気積は288m3。
0.5回/hの換気回数は、144m3分の換気量なので家全体で考えれば概ね必要換気量になります。
「ぜんぶ絵でわかる エコハウス」に心地よいエコハウスのつくり方をまとめていますので参考にしてください。