西脇 のこぎり屋根の工場跡(兵庫県)

建物名 西脇 のこぎり屋根の工場跡 住所 兵庫県西脇市
設計者 - 施工者 -
建築年 - 訪問日 2026/5/31

播州織の播博に行ったのをきっかけに、西脇の街を歩くと、リズミカルに三角形が連なる「のこぎり屋根」のファサードをあちこちで見かけます。この形状は単なるデザインではなく、織物工場としての機能性を極限まで追求した結果生まれたものです。

一歩、中へ足を踏み入れてまず感動するのは、そのヒカリの入り方の美しさです。
のこぎり屋根の傾斜が急な面(北側)には大きな天窓が設けられています。あえて直射日光(南からの強い光)を避け、北側からの安定したシアーな間接光を採り入れることで、織物の「糸の色」が狂わずに正しく見えるよう計算されているのです。朝から夕方まで、影の出にくい柔らかな光が空間を満たす様子は、まるで現代の美術館のようでもあります。

そして最大の見どころは、ギザギザとした外観の印象をいい意味で裏切る、屋根からは想像できない大空間の広がりです。
内部に入ると、天井こそ鋸歯状にうねっているものの、その下は遮る壁がほとんどない「一体で広がっている一室空間(ワンルーム)」になっています。かつて何台もの織機が並び、職人たちが一堂に会して作業していたダイナミズムが、柱と梁の美しい連続性とともにそのまま残されており、その圧倒的な開放感に息をのみます。

 

のこぎり屋根の近くに、旧来住家(きしけ)住宅があります、大正11年(1922年)に播州織の豪商・来住梅吉邸として建てられた、国登録有形文化財の近代和風建築です。高級材である木曽ヒノキや、当時の職人の意匠が光る美しい組子細工の障子、モダンな洋館の併設など、見どころが満載。庭園と一体になった座敷の佇まいは格別で、西脇の織物産業がもたらした富の大きさと、当時の美意識の高さが空間からダイレクトに伝わってきます。

さらに、織物工場で働く労働者や、全国から集まる買継商(バイヤー)たちで賑わった往時の熱気を感じられるのが、街に残る旧銭湯の遺構です。
西脇には「昭和湯」をはじめとする、当時の面影を色濃く残すレトロな銭湯建築がいくつか点在しています。味わい深いタイルの装飾や、昭和の空気感をそのまま止めた脱衣所などは、地元のコミュニティを支えた社交場としての記憶を今に伝えており、ノスタルジックな旅情をそそられます。

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