省エネとコストはセットで考える
- 2022.03.10
- エコ・コラム
省エネが進むと、当然光熱費も減ります。エネルギーが半分になると光熱費も半分、、、ではありません。省エネと光熱費の関係を考えてみましょう。
光熱費の単価を考える
エネルギーは、1次エネルギー換算係数と料金単価によって簡単に光熱費に変換できます。例えば、電気の換算係数は9.76MJ/kWhです。[※建築物省エネルギー法より]
これは1kWhの電気を家庭で使うために9.76MJのエネルギー(燃料)が発電所で必要であることを示しています。
では、1MJのエネルギーから家庭で使える電気を計算すると、逆数をとって1÷9.76MJ/kWh=0.102kWh/MJです。
これに電気料金の単価(例えば27円/kWh)を乗じると1MJの1次エネルギーにかかる光熱費2.75円/MJが求まります。
つまり電気は1MJ使用すると2.75円必要ということです。他の単価も計算してみると下表になります。
燃料種別によって、同じエネルギー消費量でも、光熱費が2倍以上異なることもあります。
電気やガスの小売自由化により、各家庭での契約体系も変化し、料金単価もかなりバラツキがあります。下表の算出には、各地域、各家庭で適切な料金単価を設定してください。
下表の単価で比較すると同じエネルギー量を使用して最も安いのは、深夜電力です。ただ、各電力事業者では深夜電力料金の新規契約を取り扱っていないところも多いので注意が必要です。
そうなると、次いで、電気と灯油が同じくらいでしょうか。ガスは少し割高に見えます。
エネルギーから光熱費に換算する
一次エネルギーの計算は、WEBプログラムを使用すると簡単に算出できます。
WEBプログラムの活用については、専門技術者研修 木造建築オンデマンド研修の「省エネ基準~義務を超えた説明~」で動画解説していますので、そちらをご覧ください。
例えば、従来型ガス給湯器の一次エネルギーは、23,686MJ、太陽熱温水器とエコジョーズと組み合わせた場合は、17,150MJと簡単に求めることができます。
つまり、1年間の省エネ効果は、6,536MJです。
光熱費に換算すると都市ガスで6,536MJ×3.278円/MJ=21,425円の節約です。LPガスだとそもそもの単価が高いので32,765円の節約です。
一方太陽熱温水器のイニシャルコストは、工事費込で25~35万円くらいが相場なので、概ね8年~16年の回収期間です。
太陽熱温水器は天候の影響が大きいですが、天気予報と合わせて使い方を工夫することでさらなる省エネが期待でき、回収期間はもっと少なくなります。
太陽光発電の費用対効果
近年、太陽光発電の売電価格が安くなってきて、今さら設置するのはもったいないと考えていませんか?実は、経済的なメリットに加え、燃料単価の変動リスク回避に有効です。
このようなことも、少し計算するだけで自分で判断できます。
住まいの優先順位は①建築の高性能化と②暮らしの工夫、②省エネ設備の導入、④創エネ設備の設置という優先順位が良いと以前紹介しました。
その順番は守りつつ、創エネの代表格である太陽光発電の費用対効果を考えてみましょう。
FIT制度(固定価格買取制度)が開始された2012年は1kWhあたり42円の高額買取価格で注目を集めましたが、2021年度は19円と半分以下の買取価格。
今さら太陽光発電を付けるのはどうなのでしょう。
結論から言うと経済的なメリットに加え、光熱費増加のリスク回避のために、建築予算が捻出できればつけるべきです。
そもそもFIT制度の目的は、当時高かった太陽光発電を普及させて、誰でも設置できるような価格にもっていくことです。その成果もあり、2012年頃の設置費用は50万/kWくらいだったものが、現在は35万/kWくらいに下がってきました。
4kWの太陽光発電の設置費用は約140万円程度。WEBプログラムによると総発電量は39,004MJ(自家消費16,444MJ、売電22,560MJ)です。
光熱費に置き換えてみると、自家消費による削減分は、16,444MJ×2.75円/MJ=45,221円、売電による収入は、22,560MJ×1.95円/MJ=43,992円の足して89,213円が、現状1年間に得る利益です。
年間約9万円の利益が見込めます。このままいけば16年で元が取れます。
ですが、売電価格はPVの普及に伴ってさらに安くなることが計画されています。
例えば半分の買取価格になっても、年間約7万円の利益です。これでも20年で償却できます。
また、安い売電ではなく、エコキュートを昼間に動かすなどの自家消費率を増やすことで買電を減らすことができ、利益が大きくなります。
さらに今後、買電価格が値上がりするリスクを考えると、将来コストの変動リスクを軽減できます。
つまり、太陽光発電の設置はまだまだメリットも大きく、将来不安を取り除く効果も期待すると設置は前向きに検討すべきです。
准教授 辻 充孝
※「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
エネルギー関係は、2021年12月号(第18回)、2022年1月号(第19回)で解説。
2021年12月号 第18回「エネルギー① エネルギーの勘所を押さえる」
RULE1 高効率給湯機は必須
RULE2 暖房エネルギー削減は断熱性能が切り札
RULE3 エネルギー計算プログラムを活用する
やってみよう! 「エネルギー消費量削減の勘所を養う」
2022年1月号 第19回「省エネと光熱費はセットで考える」
RULE1 エネルギーから光熱費を計算する
RULE2 1年間のエネルギーと光熱費を予測する
RULE3 費用対効果で省エネを考える
RULE4 太陽光発電の設置は前向きに検討する
やってみよう! 「暖房設備別の光熱費を計算してみよう」
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