地域環境を読む
- 2022.03.10
- エコ・コラム
敷地分析図を描く
敷地の南はどんな家が建ってますか?隣の家の窓や室外機の位置はどうですか?
同じ地域でも立地によって土地の持ち味は全く異なります。
ですが敷地周辺の調査をしようと、いきなり敷地に行くのは効率的ではありません。敷地に行っても、その廻りだけしか確認せずに見落としが発生する可能性が高いからです。まずは少し広い範囲で可能な限り予習をして出かけましょう。
確認したいのは、山並みによる日照影響や周辺環境、人の流れ、各方位からの視線など様々です。
まずは、ネットでいろいろ調べて敷地分析図(下図)を描いてみましょう。
白地図にトレペを重ねて記入したり、航空写真を印刷してマジックで書きこんだり、敷地分析図の書き方は自由です。
googleマップやストリートビュー、各市町村のHP、古地図など、ネット上のサイトから様々な情報が得られます。
山間部の敷地分析は、山による遅い日の出や早い日の入りが特に気になるところ。これらは大きく環境性能に影響を及ぼします。
また、せっかくの景色に対して、きちんと開放できる環境にあるかなど、見たい要素が多岐にわたります。
一方、街中の敷地分析は、隣棟による日射遮蔽や、人の流れや視線、騒音状況、防犯関連などが気になりそうです。また、眺望が得られそうな方向も予測しておきましょう。
敷地を俯瞰して、気になるポイントを整理しておきましょう。
敷地をポジティブに読む
事前に敷地分析図を描いたら、それをもって現地に行ってどうなっているのかを具体的に確認していきます。(下図)
敷地のマイナス面は、いろいろな工夫で対処できますが、それだけでは普通に住みよい家になるだけで、心地よさにはつながりません。
敷地のポジティブ要素を見つけて、それを活かす設計にすることで、その土地ならではの住まいにつながります。
ポジティブ要素を手掛かりに計画を考える始めると、いろいろなアイデアが浮かんできます。
緑の繋がりやシンボルツリー、視線の抜け、日照、風当り、周辺の町並み(素材や色、外からの見え方)、高低差など見るべきポイントはたくさんあります。
ポジティブ要素をなるべくたくさん見付けましょう。
ネガティブ要素があっても、同時にポジティブ要素になる場面も良くあります。
例えば、北は影になって寒そうというネガティブな印象があるかもしれませんが、開口部の断熱性能を上げればネガティブな寒さはなくなります。
そのうえで、一年を通して光の量が安定し、眩しさを抑えた昼光利用がしやすい方位ですし、一年中日の当たらない終日日影は、夏期のクールスポットとしての活用ができます。
また、北庭は南の光を受けた花や樹木が鮮やかです。逆に南庭は逆光になってしまいがちです。
敷地や地域環境を読み切って、計画につなげていきましょう。
准教授 辻 充孝
※「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
地域環境の着眼点などに着目した特集は、2021年4月号(第10回)。
地域環境を読む演習や、このブログで書ききれない内容も書いてます。
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