鹿猿狐ビルヂング(奈良県)内藤廣設計

 

建物名 鹿猿狐ビルヂング 住所 奈良県奈良市元林院町22番
設計者
内藤廣(内藤廣建築設計事務所)
施工者 不明
建築年 2021年竣工 訪問日 2026/4/4

ならまちの細い路地を歩き進むと、突如として現れる開放的なガラス窓と瓦屋根の建築

1716年創業の老舗・中川政七商店が、その創業の地に「路地を巡り出会う、触れ、学び、味わう奈良」をコンセプトに創り上げたのが、この鹿猿狐ビルヂングです

建築家・内藤廣氏の手によるこの建物は、歴史の深さを湛えながらも、驚くほどおおらかで新しい「今の奈良」を体現していました

一見すると現代的な鉄骨造の3階建てですが、その設計には高度な現代技術と伝統への深い敬意が同居しています。

建物の柱間の寸法は、日本の伝統的な建物で使われる3.6m(二間)に設定し、これにより、柱を細く抑えることが可能となり、内部空間には周囲の古い木造建築と調和するような心地よいリズムが生まれています。

屋根には瓦葺きを採用し、通りに面した軒庇を細かく分節化することで、ならまちの歴史的な景観に違和感なく溶け込むよう、緻密に作り込まれています。

この建築の最大の魅力は、建物の中央に設けられた中庭と、そこにつながる新たな路地の存在です。

かつての路地を立体的に延長したような構成により、街を歩く体験がそのまま建物内部へと連続していきます。

1階と2階を占める中川政七商店の旗艦店は、開放的なガラス窓に囲まれ、外の街並みを背景に日本の工芸が美しく浮かび上がります。

敷地内には、新築のビルだけでなく、築100余年の町家の貯蔵庫を改装した「時蔵」や「布蔵」も共存しています。

400年分を超える桐箱の引き出しが並ぶ「時蔵」や、手績み手織り麻の機織り体験ができる「布蔵」は、300年の歴史の厚みを肌で感じさせてくれます。

中川政七商店の「鹿」、猿田彦珈琲の「猿」、㐂つねの「狐」が集うこの場所は、歴史ある古都を次世代へと繋ぐ、温かくも凛とした「奈良の新しい玄関口」のような建築体験でした。

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