東京大学 弥生講堂 一条ホール(東京都)香山壽夫 設計

 

建物名 東京大学 弥生講堂 一条ホール 住所 東京都文京区弥生1-1-1(東京大学農学部キャンパス内)
設計者 香山壽夫建築研究所 施工者 -
建築年 2000年竣工 訪問日 2026/6/13

東京大学の本郷・弥生キャンパス「弥生講堂 一条ホール」へ。
今回の目的は、審査員を務めた「木の建築賞」の表彰式。

大通りに面したガラスのファサードを抜けると、そこに広がっているのは、まるで現代の「木の神殿」のような空間。カラマツの太い集成材が3.6メートルのグリッド状に林立し、まるで豊かな森の中に迷い込んだかのような錯覚を覚えます。

実はこの敷地、都市計画上の用途地域や防火規制(法的な境界)をまたいで建っているため、本来であればこれだけ大規模な木造建築を建てるのは至難の業。防火の観点から、全面的にRC造や鉄骨造にせざるを得ないような厳しい立地です。

しかし設計者の香山壽夫氏は、ここを「木造一部鉄骨造」という混構造にすることでその難題をクリアしました。 構造の要所に鉄骨を組み合わせ、耐震・耐火性能を確保した「準耐火建築物」として処理。法律の厳しい縛りをクリアしながら、メインホールに架かる20メートル超のダイナミックな木造大梁と、あの開放的なガラス張りの空間を見事に両立させているのです。技術と法規の処理がこれほど美しく昇華された例は、そうそうありません。

ホールの喧騒を離れ、ふと目を向ける中庭もまた、驚くほど落ち着いた静けさに満ちています。木造フレーム越しに切り取られる緑は、訪れる人の心をすっと鎮めてくれます。

本郷キャンパス内をのんびりと散歩。東大のシンボルである「安田講堂」の前までやってきました。

重厚なゴシック様式の安田講堂を眺め、その前広場にあるカマボコ型の入り口から地下へ降りてみると、度肝を抜かれました。「まさか、地下にこれほど広大な空間が隠されていたとは……!」

そこは、広場の下をまるまるくり抜いた円形の巨大な「中央食堂」。地上からは一切想像もつかない、まるでシェルターか秘密基地のような大空間です。 現在の食堂はリニューアルされ、折り紙細工のような幾何学的な天井面や、木製の吸音ルーバー、そしてトップライトから差し込む自然光が効果的に使われており、地下特有の閉塞感を全く感じさせないモダンな空間に生まれ変わっていました。

上野のコルビュジエと前川國男の対比、そして東大の「地上にそびえるモダンな木造フレーム」と「地下に隠されたRCの巨大空間」。建築が持つダイナミズムと、それを支える技術の面白さを、改めて深く体感した素晴らしい1日になりました。

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