建築設計用気象データ 分析ツールに鉛直面日射量を追加
ダウンロードページに設置している「建築設計用気象データ 分析ツール」に鉛直面の日射量を追加した新しいバージョン1.5を公開しました。
計算式は、田中俊六先生の「最新 建築環境工学[改訂4版](井上書院)」より、
鉛直面の天空日射は、形態係数1/2より、水平面天空日射の半分。
鉛直面の直達日射は、法線面直達日射量×cos太陽高度 × cos(太陽方位角-鉛直面の方位角)
で求めています。
鉛直面日射量が分かるといろいろなことが見えてきます。
例えば、森林文化アカデミー(岐阜県美濃市)の日射量を概観してみます。
最も寒くなる1月に最も日射があたるのは南面で364MJ/m2です。次いで僅差で水平面312MJ/m2です。
水平面は天空日射と直達日射が半々程度に対し、南面では直達日射の割合が8割近くを占めています。
つまり、直達日射をいかに取り込めるかが大切というわけです。
庇を出しすぎて直達日射を遮ってしまうとせっかくの太陽のエネルギーが取り込めません。
最も熱くなる7月を見てみると、水平面日射量が最も多く481MJ/m2です。南面は185MJ/m2と半分以下です。
内訳は、水平面の天空日射は6割くらいで冬期より減っていますが、直達日射の割合は4割近くあります。
顕著に異なるのは南面です。天空日射が8割以上を占めており、直達日射が少ししかありません。
そのため、庇等で直射日光を遮っても空が見えていると天空日射が意外と多く入ってきます。外構計画なども大切な要素です。
日射量が最も多くなるのは5月です。
夏至直前の梅雨入り前で日照時間が長いことが影響しています。ただし、鉛直面の日射は水平面の半分以下です。
太陽のエネルギーをうまく活用するには、屋根や庭が効率的です。
ただ、この頃の気温は心地よく、暖房、冷房ともに必要ありません。
そのため、効率よく太陽光発電で電気を作ってもうまく活用しきれません。すでに日中の電気があまり始めています。
蓄電やV2H、おひさまエコキュートなどを活用して、いかに有効に活用できるかを考えることが大切です。
秋も気持ちのいい季節で春と似た印象ですが、日射量は冬至に向かって徐々に減ってきています。
気温は同じくらいでも春よりもどことなくひんやりしているのは日射が少ないためでしょう。
10月の日射は5月の6割くらいです。太陽高度が下がってきており南面の日射量が増えてきました。一方、秋分を過ぎると北の直達日射はなくなります。
少し肌寒い日は、南の窓から日射を取り込むことで心地よさが増します。
水平面日射量と鉛直面日射量を分けて考えると、暮らしの工夫の仕方も見えてきます。