外皮表面温度(相当外気温度)はどこまで上がる?
- 2022.03.10
- エコ・コラム
日射が入ってくるのは開口部からだけではありません。
屋根や外壁に日射が当たると、外部の表面温度が上がり、温度差ができるため室内に熱として入ってきます。
そのため不透明な外皮(屋根や外壁、建具)からの日射熱を防ぐ方法は2つです。
①外部の日射反射率を高めて外皮表面温度を上げないこと(遮熱性能)
②日射が当たって上がってしまった外皮表面温度を室内に伝えないための断熱性能
つまり、②の断熱性能U値は、冬期に熱を逃がさないだけでなく、夏期には不透明外皮からの熱の流入を抑えてくれます。
断熱性能を上げることは、冬も夏も効果的でまず対策すべき性能です。
断熱性能U値の計算や効果は過去のブログも参考にしてください。
・断熱性能の基本1 熱貫流率U値の計算(心地よいエコな暮らしコラム18)
・断熱性能の基本2 熱貫流率U値から室内表面温度の計算する(心地よいエコな暮らしコラム19)
今回は、外皮表面温度をコントロールする①の遮熱性能について考えてみます。
皆さんは、車の色で室内の温度が違うと感じたことはありませんか?
黒い車が炎天下に停めてあると中はとても入れる温度ではないのに対して、白い車はそこまで暑くない。
この違いは、どこから来るのでしょう。
表面温度を決めるのは、主に二つの要因です。
1.外部表面の反射率
2.外部風速
車の例では1の表面反射率の違いによるものです。
黒い車は、日射を10%程度しか反射しない(90%は吸収して熱に変わる)のに対し、白い車は60%以上は反射しています。
外部風速はどのように影響するのでしょう。
熱い料理を口にするとき、フーフーと息を吹きかけて冷ましませんか。
空気の対流によって熱を空気温度に近づけようとしている行為です。
日射を吸収した表面温度は外気温を上がっていますので、風が吹くと冷まされて温度が上がりにくくなります。強い風ほど効果的です。
外皮表面温度(相当外気温度)の計算
屋根や外壁に日射が当たると一部は反射しますが、残りは吸収され外部の表面温度が上がっていきます。この温度を相当外気温度と呼びます。
相当外気温は表面素材に影響を受ける「日射吸収率」、風速に影響を受ける「表面熱伝達抵抗」、日射の強さを表す「全天日射量」の3つに影響され、下記の簡単な式で求めることができます。
相当外気温度 = 外気温[℃] + 日射吸収率[-] × 表面熱伝達抵抗[㎡K/W] × 全天日射量[W/㎡]
表:代表的な素材の日射吸収率と風速の違いによる表面熱伝達抵抗
(グレーに色付けしている日射反射率0.8、3.3m/sの値は省エネ基準で固定値として使用している値)
例えば、外気温30℃、黒い屋根で風速が3.3m/s、晴天日の全天日射量900W/㎡の時、
相当外気温度=30℃+0.92×0.043㎡K/W×900W/㎡=65.6℃
と、気温の倍以上に相当外気温があがることが計算できます。
日射吸収率の低い真っ白い屋根だと、
相当外気温度=30℃+0.20×0.043㎡K/W×900W/㎡=37.7℃
と温度上昇はかなり少なくなります。
夏の黒と白の車をイメージとあってきませんか?
注意点としては日射吸収率の低い外装材を使用しても、汚れてくると吸収率が上がります。遮熱塗料などを使用して性能を維持する場合は定期的な清掃が必要です。
准教授 辻 充孝
※「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
日射熱制御性能ηA値は、2021年10月号(第16回)で解説。
2021年10月号 第16回「日射熱制御の基本② 不透明外皮の日射制御と家全体のηA値」
RULE1 外皮表面温度(相当外気温度)を求める
RULE2 断熱性能の向上で日射を防ぐ
RULE3 日射熱は家全体で考える
RULE4 夏と冬のバランスを考える
やってみよう! 「仕様変更した場合の冷房期 外皮平均日射熱取得率ηAC値と侵入熱量の再計算」
-
前の記事
開口部の日射熱取得 2022.03.10
-
次の記事
気密性能で足元の温度を上げよう 2022.03.10