気密性能で足元の温度を上げよう

今回は気密性能の話題です。

住まいで気密と聞くと息苦しい印象を受ける人がいるかもしれませんが、閉め切って暮らしなさいというものではなく、住まい手が開いたり閉じたりできる性能のことです。

気密性能が高いと気持ちいい季節には窓を開け放して風を入れ、逆に冬はしっかり閉じて隙間風をなくせます。

隙間はどのあたりに多く存在する?

建築研究所で築40年程度の木造住宅を想定したLDKで部位ごとに隙間を計測するとLDK(34.9㎡)だけで558 cm2の隙間がありました。(下図)

そのうち、天井と、床と壁の取り合いの隙間が60%以上を占めており、部位の取り合いに注意することが大切です。

また、エアコンのスリーブ(2か所)だけでも36.7 cm2の隙間がありました。一般的な吸気口は15 cm2程度なので、大工さんだけでなく、設備関連の職人さんとの調整も大切です。

足元の寒さは気密が弱いから

冬になるとどうも足元が寒いと感じることが多くありませんか。

ご存じのように暖かい空気は比重が軽く部屋の上部に集まるからだと考えますよね。半分あってますが、半分は更なる影響があるのです。

先ほどの隙間の大きさを思い出すと、天井と壁の隙間が31%。つまり上部に隙間が空いている状態です。暖かい空気は天井付近にたまらず、外に逃げてしまいます。

そうすると、床と壁の取り合いから冷たい外気が入ってくるのです。暖房を炊いて暖かくすればするほど、足元が寒くなってしまいます。

足元の寒さは、断熱性能だけでなく。気密性能が大きく影響します。

隙間風も気密性能で防ぐ

気密性能が悪く隙間が多い住宅で、強い風が吹いていると、冷たい外気が直接室内に入ってきて住まい手に大きな不快感を与えてしまいます。

風の強さはコントロールができませんが、気密性能を高めることで、風が強い日でも安定して隙間風をなくすことができます。

気密性能が悪いと、1時間に半分以上の空気が入れ変わるほどの外気が入ってきます。(外部風速2m/s、15℃の内外温度差、住宅地に建つ気密性能5c㎡/㎡の住宅)

これが高気密(C値1c㎡/㎡)になると、外気の影響をほとんど受けず10%も空気が入れ替わりません。

暖かさを考えると、まずは断熱性能と考えがちですが、気密性能も大切な要素。

住まいの性能をバランスよく高められるように考えましょう。

准教授 辻 充孝

※「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
気密性能C値は、2021年11月号(第17回)で解説。

2021年11月号 第17回「気密性能の基本 空気の動きをコントロールする」
RULE1 部位の取り合いを攻略する
RULE2 気密性能を実測する
RULE3 C値1.0 c㎡/㎡以下を目指す
やってみよう! 「気密性能と隙間風の影響を見てみよう。」