【章トビラ 課題5-1】あなたが考える理想的な断熱材は何ですか?理由も含めてまとめてみましょう
「ぜんぶ絵でわかる7 エコハウス(エクスナレッジ)」の各章扉に出した課題の考え方や答えを綴るブログです。
本を手元に置いて、自分でも課題を考えてみてください。
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断熱材には様々な種類があり、何を選択するか悩ましいものです。
おそらく日本で最もよく使用されているのは、費用対効果の優れるグラスウールではないでしょうか。
それ以外にもロックウール、現場発泡系ウレタンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム(XPS)、ビーズ法ポリスチレンフォーム (EPS)、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム、セルロースファイバー、羊毛断熱材などたくさんの種類があります。
それぞれの断熱材にメリット・デメリットがあり、全てが理想的な断熱材は無いでしょう。
断熱材でまず考えるべきは断熱性(熱伝導率)です。
これが劣ると、断熱性能を確保するために厚く使用する必要があり、納まりが難しくなってしまいます。(113ページ:熱伝導が良くても薄ければ断熱性能が上がりませんので、性能×厚みが大切)一定以上の性能は欲しいものです。
高性能なものほど設計の自由度が高くなりますが、熱伝導率が0.04W/mK以上であれば工夫で何とかできるか・・・。
次に重要視する要素は、設計者の考え方や住まい手の要望によって変わってくるでしょう。
たとえば、建設費を抑えたいのであればコストパフォーマンスが大切ですし、環境意識が高ければ製造エネルギー、廃棄処理方法やリユース性、再生産可能かどうか、+αの心地よさを得るには夏期の温熱環境を整える蓄熱性や調湿性、他にも施工者への負荷や重量、燃性、耐久性、JIS規格など考え出したら切りがありません。
ここは、皆さんや住まい手が何に重きを置くかを整理して考えてみましょう。
断熱材に求める性能をいくつかピックアップしてみました。
丸の大きさを設計者や住まい手が重きを置く要素のイメージで書いてみると、わかりやすいかもしれません。
これらの要素を全体のバランスを見ながら、どの断熱材を採用するかを考える必要があります。
重きを置く要素と断熱材の特性を数値化してみると、整理されるかもしれません。
今、検討している物件で考えているのは、セルロースファイバー断熱材です。
住まい手の環境意識が高く、コストを最優先に考えるのではなく、性能など総合的に検討した結果です。
考えられるセルロースファイバーのメリットを具体的にあげてみると、
・充填断熱(柱や梁などの構造躯体の間に入れる断熱方法)でも、筋交いや多少の歪んだ空間でもきちんと施工できる(マット状、ボード状のものでは施工が難しい)
・断熱材の中でも蓄熱性が高く、特に夏期天井が暑くなりにくい(夏期日中と夜の温度差は40℃近いですがその影響を受けにくい)
・リユース(一部バージンセルロースを混ぜるので正確にはリサイクルですが)回収システムがある
・製造負荷(製造エネルギーやCO2排出)が一般的な断熱材であるグラスウールや発砲系断熱材に比べて数十分の一程度と少ない
・JIS規格があり製品としてきちんと評価できる仕組みがある(自然素材系断熱材でJIS規格があるのは少ない)
・カーボンフットプリントなどの認証も取得している製品もある
・調湿性能(蓄湿性能)があり、夏型内部結露に対して非常に有効
・ホウ酸(安全性が高く、性能が持続)で処理しているため躯体内の防虫効果が高い
・ホウ酸処理によって、防火性能が高く、表面炭化により燃焼時も有毒ガスを出さない(発泡系は70~130℃で融解、GWは燃えないまでも350℃前後で溶ける)
・密度が高く隙間ができにくいため、外部の騒音(特に空気伝播音)が入りにくい
ただ当然ながら、デメリットもあります。設計の工夫で対応しないといけません。
・コストがグラスウールと比べると同じ性能を出すには高価
⇒断熱選択の優先順位を高めて、全体のコストコントロールで調整。建設費の断熱材の割合は数%程度でその数割アップといった感じ。
・施工には専門の職人さんと専用の吹込み機械が必要(後で少し足すことが難しい)
⇒工程管理をしっかり行って対応する必要がある
・密度高く吹き込むため、パンパンに膨らみボードなどを張りにくい
⇒胴縁等で納まりを調整
・密度がゆるいと長期的に沈下して隙間ができる
⇒施工監理でしっかり密度を見ることで沈下を防止
・重量が増えがちのため、構造的負担が大きくなる
⇒設計段階で断熱材の重量を含めた構造計算で安全性を確保
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