温熱性能の向上と結露対策は必ずワンセット

温熱性能を向上させると、暖かい室内と寒い外部とで温度差が大きくなり、結露が発生しやすくなります。

結露が発生すると、木材腐朽菌やシロアリによって建物が短命になったり、カビやダニによって健康を害してしまうことがあるため、温熱性能の向上は結露対策と必ずセットで考えないといけません。

そのためには、見えない水蒸気が、どのくらいの量が存在してどのように動いているのかをイメージする必要があります。

下図は、1m3あたりの空気中に含める水蒸気量を示しています。
室温25℃、相対湿度100%の時は空気1m3あたり最大23.0gの水蒸気を持てます。例えば室内が25℃、50%だったとすると、室内の水蒸気量は50%分の11.5g/m3です。

この空気が窓際などで冷やされて、10℃まで下がると最大(100%の相対湿度)でも9.4gしか含めません。つまり空気中に持ちきれなくなった2.1gが結露水となって表れてくるのです。(13.2℃を下回ると結露発生が発生します。)

また、図から気温が高いと多くの水蒸気を持てることがわかります。
水蒸気は多いところから少ないところへ広がっていき同じ水蒸気量(水蒸気圧)になるように移動します。冬は暖かく水蒸気の多い室内から外に出ていこうとします。一方、夏は蒸し暑い昼間は外から室内へ、涼しくなった夜間は室内から外へと一日の間で変化します。

結露は、暖かく湿った空気が冷えた部位に触れることで発生します。
温度差の大きくなる冬と夏において、目に見える所で発生する表面結露と、躯体内でこそっと発生する内部結露があります。

つまり、組み合わせると①冬の表面結露、②冬の内部結露、③夏の表面結露、④夏の内部結露の4つに分類できます。特に内部結露は見えないところで発生しますので、要注意です。

■表演結露の対策

冬と夏の表面結露の対策は簡単です。外部の温度に影響されないように断熱性能を高めることです。
開口部以外は、省エネ基準程度の断熱があれば、よほど結露しません。開口部はアルミ樹脂複合サッシのペアガラス以上ははしいところです。

■内部結露の対策

冬の内部結露対策は防湿と湿気のコントロールが大切です。
内部結露は、湿った水蒸気が屋根や壁の内部に入り、目に見えない冷えたところで発生している結露ですので、
対策の基本は、室内の湿った空気を躯体内に入れないように、湿気の多い室内側に水蒸気を通しにくい素材で隙間なく作り、入ってしまった水蒸気を外気に排出できる仕組みを作ることです。

夏の内部結露対策は室温を下げすぎないことです。
夏の内部結露は、冷房で冷やされた内装下地内で発生している結露です。室温を下げすぎないことで、問題となるほどの結露は発生しにくくなります。
また、透湿可変シートや調湿性断熱材を使用することでも回避できます。

対策をまとめると下の表になります。

せっかく、冬に暖かく、夏涼しい家を作っても、結露によって短命になったり、健康を害する家になってしまっては元も子もありません。

温熱性能の向上と結露対策は必ずワンセットで考えましょう。

准教授 辻 充孝

※「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。

2022年2月号 第20回(最終回)「温熱性能と結露対策はワンセットで考える」
RULE1 見えない水蒸気をイメージする
RULE2 結露がどこで発生するかを知る
RULE3 冬夏の表面結露は断熱強化で対策
RULE4 内部結露は水蒸気のコントロールで対策
RULE5 4つの温熱性能のバランスを整える
やってみよう! 「温熱性能を実測して心地よい暮らしを考える」