寝室の室内環境が最重要
- 2022.03.10
- エコ・コラム
住まいで一番大切にしたい空間はどこでしょうか。
家族が集まるリビング?
それとも子供室?
もちろん、それらも大切ですが筆者としは寝室が最重要と考えています。
どれくらいの時間を住まいで過ごしているか考えたことはありますか?
日本人の平均睡眠時間は7.6時間です。※1
食事や団欒の時間を含めると、多くの人は12時間以上家にいます。
今年になって特に増えてきた在宅ワークの方はもっと増えます。
つまり人生の半分以上を家で過ごし、その大半を寝室で過ごしているのです。
ここからも室内環境、とりわけ寝室の重要性がわかります。
特に寝室での睡眠は一日の疲れをとり、心身ともに回復させる機能を担う必要があります。
睡眠中は意識がないからこそ、温湿度や光、空気環境などの室内環境をしっかり整えないといけません。
海外でも寝室の重要性が指摘され、ドイツ・バウビオロギーの指針値(SBM2015)では寝室における温度、湿度、CO2のほか、放射性物質や電磁波、有害化学物質、汚染物質などの指針が定められています。
寝室で考えないといけない要素は、温湿度以外にも、音や光、空気質、電磁波、空間の設えと、本当に多岐にわたります。
寝室におけるチェックリストと目標値は、建築知識の連載を参照してください。
※1 総務省の社会生活基本調査(2016年)の全国の平均睡眠時間(10歳以上,土日を含む週全体の平均)より
室温について考えてみます。
冷え切った寝室での起床時や、脱衣を伴う入浴時など、温度差によってヒートショックが多く発生しています。
脱衣所は事前の暖房で回避できますが、起床時はどうにもなりません。
私も委員として関わっているスマートウェルネス住宅調査※から、健康に大きく影響する血圧と起床時に室温の関係がわかってきました。
例えば冬の起床時の室温が、20℃から10℃に下がると血圧が上がります。
30歳男性では3.8mmHgですが80歳男性では10.2mmHg上昇することがわかりました。
高血圧リスクの高い高齢者において室温の影響は特に顕著です。
また、低温な住まいでは循環器・呼吸器系疾患患者が多く、新型コロナ感染症を重症化させる可能性があります。
家が寒い場合は断熱改修がお勧めですが、改修が難しい場合は暖房設備でしっかり暖めましょう。省エネより健康が大切です。
※スマートウェルネス住宅等推進調査委員会は医療福祉系及び建築系の専門家で構成され、約2000軒、4000人を対象として、改修前後における血圧や活動量等、健康への影響を検証した。(2014~2018年度)
准教授 辻 充孝
※私のつたないスケッチではなく、イラストをたっぷり使った
「無理をしないで心地よくエコに暮らす住まいのルール」を建築知識で連載中。
寝室環境に着目した特集は、2020年12月号(第6回)。
このブログで書ききれない内容も書いてます。
こちらもぜひご覧ください。
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