教育と人づくり(「風の谷」という希望 )
教育と人づくり (「風の谷」という希望)
第Ⅲ部の6つの領域から「 教育と人づくり」
・暮らしとの関り、自然との触れ合い、他社との交わり、自らを問い続ける姿勢。人の学びとは、本来そうした全体性の中にある
・人は他の動物に比べて明らかに未熟な状態で生まれてくる。一方で可塑性(学習能力)が極めて高く、環境との相互作用を通じ、短時間に著しい成長と発展を遂げる動物
・誰もが一生にわたって学び、成長していく。新しいことを学ぶことは人間の本能である。
・ほとんどの人間の特性や行動は、遺伝と環境の複雑な相互作用によって形成
・教育が与えている7つの力(受ける側、学ぶ側から見た価値)
- 人間社会で生きる基礎となる言葉、表現のあり方を身に着ける
- 人間社会での生き方と社会参加の仕方を学ぶ
- 世の中で何が起こっているのか理解できるようになる
- 好きなもの、得意なものを見つける
- 必要な訓練を経たことの保証を得る
- さまざまな文化や価値観、伝統の蓄積を学ぶ
- 貧困や無知による暴力や犯罪などの負の連鎖を断ち切る
つまり、教育はヒトを人にし、生きていく自信とエネルギーを与える行為
・教育・人づくりが解決している3つの主要課題(社会視点で見た役割)
- 社会の安定と持続的な発展の土台づくり
- 格差の是正と機会の平等の提供
- イノベーションの源泉の創出
・教育の効果というと、知識やスキルの習得ばかり議論されがちだが、社会を安定させるために必須の人格の形成や適切な倫理観、価値観の醸成も人づくりの重要な役割
・教育への投資は長期的な視点に立った社会全体の未来への投資と捉えるべき
・無理解と不寛容の解決、異質の理解と許容こそが大きな教育の背骨に入るべき
・知性の核心は、外からの情報のイミを何重にもメタ化し、総合的に理解する川上、川中過程、すなわち「知覚」にある。
・知覚のほぼすべては経験から生まれる。経験には大きく知的経験、人的経験、思索経験の3つ
・人が学ぶ空間の拡がりは、教室、学校、家族や子供の世話をする人たち、コミュニティの4つ
・外的な強制ではなく、自律的に行動し、内発的な動機付け、やる気に基づいて取り組むことが大切。ムズムズして学ぶこと、ムズムズさせられるかがとても大切
・生徒数がどこまで減っても基礎運用コストは年に3000万円後半はかかる。児童一人当たり年100万円以上の経費が発生
・日本の高等教育は社会に出る前の準備教育を充実させることが本来の役割
・教育基本法2006年の改正で「教育とは、人格の形成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない」
・2024年段階での人材育成の新しい文脈
・知的作業におけるAIの圧倒的な台頭(人間を超えた認知能力、AIツールの日常化)
・産業構造の抜本的な変化(AIシステム同士の自律的連携)
・人生100年時代の到来(障害にわたる学び直しと価値創造、複数キャリアを横断)
・人類社会の根源的な課題(地球との共存、人口調整局面)
・求められる新たな人材像(価値をN倍以上にする想像力)
・問う力を持ち、答えのない問いに向き合え、テクノロジーと共生でき、自然との調和を実現でき、新しい価値を創造し続けられ、生涯にわたって学び成長できる人材のこと
・リベラルアーツ(教養)においてリーダー層に求められるのは、1母国語と世界語でものを考え、人に伝えることができること、2問題を正しく見極め、理解できる能力、3自然科学・人文科学、社会科学についての大学教養レベルの素養、4AI×データの力を解き放つための基礎的な力、5レジリエンス課題への理解とシステム思考
・これまで人手にのみ依存してきたアイデアの壁打ちの力は、人間と機械知性が協同する新しい時代に突入
・コンテキストで見極めるべきポイント、答えを出すべき課題(イシュー)がわかり適切に言語化できること、すなわち問う力が相当に大切。機械が生み出す物にダメ出しする力も必要。自分が価値を感じるものと感じないものを区別する能力はそれにもまして大切
・マインドセットとして留意しておきたいポイント5つ
意思と価値観、部分ではなく全体として受け止める力、異質を切り分ける力、意味合いを突き詰める、健全な懐疑心
・新しい変化、未来を生み出す人が重要になる。つまり、あまり多くの人が目指さない領域やアイデアで何かを仕掛ける人、なにかおかしいと気づき、イやなものはイヤと言える人、夢を描き、複数の領域をつないで形にして考え推進する人、関心のある大体の話題で相談できる人がいる人。「異人」と呼ぶ
・生涯を通じた学び直し(リカレント教育)として、企業の視点では従業員の能力開発(リスキリング)への対応が始まっている
・人口の調整局面が続くことを考えれば青少年の学びというよりリカレントが中心となり財布の厚さからも大きな市場になる可能性
・「学びと人生の刷新」は既存のシステムでも吸収できる。これは、大人は子どもと違い住んでいる土地に縛られにくいこと、社会人の学び直しやリカレント教育の関心が高まっていること、学びの新しい形態が豊富になっていること。
・疎空間の教育的特徴として、自然と人間が近い、知的刺激が少ない、年齢の近い友達やお兄さんお姉さんが少ない、学校や塾が遠い、設備とインフラがいまいち
・10人以下の極小クラスでの初等教育では、社会性の発達、多様な学習経験、効率的な教育資源の利用での課題がある
・多様性を感じるには少なくとも20~30人程度の集団が必要で、理想的には100人以上の規模があるとより豊かな多様性を経験できる。男女それぞれ最低限10名程度はいた方が良い
・ユネスコの「学びの4本柱」知ることを学ぶ、為すことを学ぶ、共に生きることを学ぶ、人間として在ることを学ぶと提唱。OECDは新しい価値を創造する力、対立やジレンマを克服する力、責任ある行動をとる力という3つの変革を起こすコンピテンシーを重視、世界経済フォーラムは創造性、批判的思考、コミュニケーション、協働の重要性を強調
つまり、不連続な世界を生き抜く力を持つ人であり、変化に対応しつつ、自ら仕掛けて人類の希望となる未来を作る人こそ大切な人
・都市を生み出す人物像
個として生き抜く力の強い人
幅広い領域に適応できるオールラウンダー
情報を効率的に吸収できる人
マスへの影響力の強い人
つまり、出来た都市社会での勝者
・疎空間を生み出す人物像
どんな状況でも生き延びるサバイバリスト
強み、面白みのある多様なカタヨリスト
不器用でもカラダで学び気付きを知恵として生かせる人
人を動かしチャームを持つモテる人
つまり人類の未来を再構築できる人
・5つの力が大切
- 自然豊かな疎空間の中で生き延びる基本となる力
- 手と道具、身体を使いこなす力
- 想定外のトラブルに臆することなく楽しみつつ解決する力
- 力を合わせて知恵を絞る前提となる力
- 心に振り回されない力
・人は自分が生きている意味、役割を与えられることで成長する
・自分に対する深い自信と社会に対する楽観的な心持ちを育てていくことも大切
・それぞれが強みと興味・関心を徹底的に追求し、なおかつ内発的な学習意欲(ムズムズ)を大切にする
・学習支援ツールとして、生成AI/LLM、検索エンジン、電子辞書/事典を積極的に活用する。LLMで出てきた結果は必ず検索や辞書/事典で裏どりをする
・教員の役割が変わる。教員の大切な仕事はさまざまなことに興味を持たせること。頑張りや成長をみとめること、励ますこと。つまり教員は「教える人」から「気付きを与える人」になる。
・ライブラリーとファブをつくる。土木工事に比べたら相当に安価。
・面白い人が生まれるには、多様な出会いとホンモノに触れることができるかによる。月に1度くらい外部から面白い異人たちを招き、問題意識を共有して一緒に考え、なにかやってみるのもあり。
・疎空間で人が集まらなければ、異なる特徴を持つ別の地域に行くのもアリ。

図版やデータが豊富で読みやすく説得力がある。
過去の「風の谷」という希望の記事リンク
・「風の谷」という希望(安宅和人)
・全体構想と問題意識(第Ⅰ部)
・解くべき4つの課題(第Ⅱ部)
・自然と森、林業(第Ⅲ部-1)
・空間構造の基盤:インフラ(第Ⅲ部-2)
・エネルギー(第Ⅲ部-3)
・ヘルスケア:心を体の健康(第Ⅲ部-4)
・教育と人づくり(第Ⅲ部-5)
・食料生産と食(第Ⅲ部-6)
・谷の空間をデザインする(第Ⅳ部)
・風の谷という系を育む(第Ⅴ部)


