ヘルスケア:心を体の健康(「風の谷」という希望 )
ヘルスケア:心を体の健康 (「風の谷」という希望)
第Ⅲ部の6つの領域から「ヘルスケア:心を体の健康」
・私たちは高度に整備された都市の医療システムに慣れてすぎてしまった
・WHOの健康の定義「完全な肉体的、精神的、社会的well-beingの状態であり、単に病気や虚弱でないことではない」
・PPK(ピンピンコロリ)は、生涯と通じて活力を保ち、社会的な役割を持ち続けられる状態。真の意味で健康な生き方。
・ヘルスケアシステムの4つの視点
- 身体のトラブル、異常、課題を解決すること
- 一定レベルのヘルスケアサービス、衛生条件の高い社会インフラ(上下水道、ごみ処理ほか)日本では国民皆保険制度や医療機関を自由に選べる状態
- 現代社会全体における最大のエコノミクスの原因のひとつ。日本の200兆円の歳入のうち57兆円がヘルスケア関連支出。人類最大の敵は戦争ではなく病と不健康
- ヘルスケア領域は持続性課題が極めて深刻な分野
・ヘルスケアシステムは社会自体のいざというときのレジリエンスシステムであり、基本的人権のひとつ。社会全体のお財布(エコノミクス)の最大の課題
・保険の本質は稀に発生する不幸な人を、そのシステムに参加する全員の負担ですくい上げるシステム
・最もリスクと直結しているファクターの一つは年齢
・乳児死亡の原因は、免疫的な抵抗力のない乳幼児に対して、除菌された水道がなく、うがい、手洗いの衛生週間が無かったことが大きい。
・医療者による「医療化」とは、通常の出来事や加齢に伴う自然な変化までも医療の対象として捉え、診断や治療の枠組みに取り込んでいくこと
・ガン、心疾患、高血圧、糖尿病などの生活習慣病は医療費の3割を占め、慢性的で長期間にわたる症状を特徴の疾患を加えると医療費の半分近くとなる。けがや感染症の一時的なものは13%程度。つまり、慢性疾患をいかに軽減できるかがQOLに直結し、医療支出を下げうるカギ。
・本来は高齢者医療や介護の枠組みで対応すべき認知症患者の多くが精神病棟での長期入院の状況
・疎空間自体は本来、身体と心にやさしい空間
・外傷による死亡は負傷から1時間以内に手術室に搬送できるかが重要。心筋梗塞では1分1秒が命に関わる。
・疎空間でのヘルスケア、社会福祉関連コストの割合は高く、大きなコスト項目。道や上下水道などの基盤インフラ以上のコスト。
コストが高い理由は、
病院への移動コスト(主に救急車)
人口構成がメンテナンスが必要なシニア層に寄っていることなど。
立地によっては土砂崩れや水害に合いやすいこと、クマなどのリスクなど
仕事を引退した人が多いため社会保険サイドの収入が相対的に少ないこと
・コスト対策として
働く割合を増やすこと
シニアになっても病気にならないような予防的な健康管理を実現すること
・日に1時間でも役に立って感謝され、さらに社会保険料を払う存在になるだけで、生きる充実度がはるかに増える。
・ほんの少し健康になるだけで社会の医療負担はぐっと軽くなる
・高齢者の大多数は医療費が比較的抑えられており、一部の人が非常に高額な医療支出を必要としている
・医療費の負担率を上げずとも、医療システムに依存する人が減れば医療費は確実に減る
・クリティカリティ対応(大けがや脳内出血などの緊急性の高いトラブル対応)の3つのポイント
・センシング
リスクの高いエリアでのカメラなど、山中での電波の確保、スマートウォッチなどの常時モニタリングなど
・ドクターヘリ
ドクターヘリの維持費は年間3億円程度だが共有リソースとすることで現実的なコスト。年間600回を想定すると、1回当たり50万。救急車の利用頻度は0.045回/年・人で、この半分がドクターヘリと仮定すれば、年600回とすると2万7000人程度に1台。
・都市との連携
急性期ではない場合は元気になるまでは近隣の都市の中核的な医療施設に居住してもらう
・日々の生活におけるおける喜びの実感、すなわちJOL(Joy of Life)は単なるQOL(Quality of Life)を超えて、生きていることの実感と喜びを追求することを意味する
・JOLの実現には、その喜びを感じられる心身の状態を維持することが不可欠。
・人生の最後における活動レベルの推移は大きく3つの健康軌道
短期間で明らかな衰弱(がんの患者に多い)
長期的な制限と断続的な重度のエピソード(循環器疾患、慢性呼吸器疾患など)
長期的な衰弱(認知症、後遺症を伴う脳卒中など)
・人生の終末期において「衰弱」は最も一般的なパターンのひとつ
・JOLの実現には「歯と足」が大きな役割。歯の健康は全身の健康状態と密接に関係、足の健康は身体活動の質的・量的に関係し転倒リスクへの影響、全身の健康状態への波及効果も関係する
・人間は本質的に社会的な存在。十分な社会的なつながりがないこと(孤独)は、身体的・精神的健康に重大な影響を及ぼす。孤独は死亡率に影響を与えるもっとも重要な因子の一つ
・色々な人が混ざり合う力は一人ひとりを活性化させる
・ヘルスケアと空間づくりのつながり自体が興味深い。世代を超えて人が混ざり合うことを「タテ混ぜ」、分野を超えて混ざり合うことを「ヨコ混ぜ」と呼んでいる。
・「PPK」と日々の「JOL」の実現には、「口腔衛生」「足腰の健康」「孤独の回避」の3つの核となる要素が不可欠
・疎空間の医療基盤として、歯科医と幅広い疾患に対応できる総合診療医をセットで確保し、地域看護師や医療補助者の育成を戦略的に進める。既存の医療資源の最適化と救急対応体制の確立から始め、デジタル技術の導入と地域医療人材の育成を進める。
・土地固有の食材を活かした健康的な食文化の創造も大切
・既存の自然資源を活かしたトレイル整備を起点として、食文化の拠点となる施設整備へと展開。多様な出会いと交流を促す空間の創出が不可欠。
・既存の地域行事や伝統を活かした活動から始め、徐々により体系的な健康増進の仕組みへと発展させる

図版やデータが豊富で読みやすく説得力がある。
過去の「風の谷」という希望の記事リンク
・「風の谷」という希望(安宅和人)
・全体構想と問題意識(第Ⅰ部)
・解くべき4つの課題(第Ⅱ部)
・自然と森、林業(第Ⅲ部-1)
・空間構造の基盤:インフラ(第Ⅲ部-2)
・エネルギー(第Ⅲ部-3)
・ヘルスケア:心を体の健康(第Ⅲ部-4)
・教育と人づくり(第Ⅲ部-5)
・食料生産と食(第Ⅲ部-6)
・谷の空間をデザインする(第Ⅳ部)
・風の谷という系を育む(第Ⅴ部)


