全体構想と問題意識(「風の谷」という希望 )

第Ⅰ部 全体構想と問題意識 (「風の谷」という希望)

先日紹介した名著「風の谷という希望」はこれからの重要な指針が多くの分野にわたって書かれています。自分の備忘録として要点を紹介していきます。

第一章 問題意識と構想

・消滅しそうな集落の多くは中石器、新石器時代の頃から人が住んできた土地。自然の恵みに満ちた土地。
・人口は1800年を起点として日本は4倍以上に増えた。消滅は人口減少が原因ではない

テクノロジーと知恵を活用することで、疎でありながら持続できる自然と調和した新しい生活空間を模索したい。つまり都市集中型の未来に対するオルタナティブを作ること。もう一つの未来の選択肢を生み出すこと
・都会vs.地方ではなく、都市vs.疎空間で考える。地方について語ったとしても無意識に都市空間(地方都市)を前提とした議論になっている。
・都市(密空間)と疎空間という図式で捉える必要がある
・人口密度50人/平方キロ以下を疎空間と目安とする
疎空間に人が住むことによる一人当たりの経済負荷、環境負荷の高さは都市では考えられないほど高い
・コンパクトシティ化は本質的に「都市化」を目指すもの
風の谷は疎空間の価値を活かした新たな共生モデルの創出。つまり疎空間としての価値を大切にすることを前提とした買いの探求

・エコビレッジの多くは低テクノロジー志向で、近代文明からの「脱却」や「回帰」を志向する。風の谷では先端技術を含むテクノロジーを積極的に活用し、自然との新たな共存関係を模索

・風の谷は必要な広がりの大きさと時間軸をふまえ、100年を超える超長期的な視点と、相互に関連する10の領域を統合した系統的アプローチを採用
10の分野は、1自然と風の谷、2食と農/祭事、3空間のグランドデザイン、4土木インフラ、5エネルギーと情報通信、6まち商業空間、7生活オフィス空間、8人づくり(教育)、9ヘルスケア、10全体デザイン・文化/価値創造

・都市でしか持てなかった出会いと価値創造が可能であり、疎空間としての魅力を失わない
・デジタルは水道や電気と同様、ないと困る現代社会のインフラ
・デジタルを絡めた取り組みではマジカル(魔法的)な希望的観測が働きやすく、詰めが甘く立ち上がるケースが多い。
・「場」として、その疎空間が魅力的な形で成立しえないのであれば、それは疎空間を生き続けうることに失敗したと考えざるを得ない

・3つのスケールで考える
大スケール:街区、機能、中スケール:開発、小スケール:人間視点での景観

・富が入ったり、整っていても、有機的に生まれたものでない空間は持続しない
人づくりをセットで行わない限り、このプロジェクトが持続し、完遂することはない
・人づくりと価値創造の2重ループを数世代にわたって回す必要がある

 

人類の2大課題

2大課題とは「人類と地球との共存」と「人口調整局面のしのぎ方」

・AIやデータはそのために使うべき

地球との共存

人類の生存に影響する真に深刻な脅威はパンデミックや地球温暖化
・豪雨や土砂災害の直撃を受けやすいのが疎空間
・パンデミックは人間社会と野生動物の社会が近いことが、感染症発生の構造的な背景の一つであり、この接点の多くは疎空間側に存在する
地球との共存問題は、激しい温暖化や天災に対し用意できた社会だけでなく、パンデミックに対する備えもできた社会にする必要がある
・戦争や紛争が無いだけでなく、転載やパンデミックで社会が破壊されていない状況のことを、これからは平和と呼ぶ必要がある
・これからは「ヒト善」と「地球善」の好転にある取り組みしか許容されなくなる

人口調整局面

・主要国の多くは人口調整局面にあり長期的な補正局面として捉えるべき
・80歳を過ぎても健康であれば働くのが当たり前の社会になる可能性が高い
・リスキル、アップスキルが必須の社会になる
・既存の生産年齢人口の生み出す余剰で回すことを前提としているヘルスケアシステムや年金機構や、メンテナンスできなくなるインフラ(道、上下水道、ごみ処理、モビリティ、教育、ヘルスケアなど)や施設の課題

「地球との共存」と「人口調整局面のしのぎ方」の2つのグローバル課題には共通する本質がある。それは予測困難な変化や困難に対して、いかに社会システムが適応し、回復力を持つかという問題(レジリエンス問題)

・レジリエンスとは変化に対する対応力

・毎年経済活動の1割を低環境負荷型に移行させ(10年ですべての経済活動を移行)、その移行した部分で毎年3%ずつ環境負荷削減できたとしても、ピークアウトに5年、全体ん環境負荷が取り組み開始時点以下にまで転じるまでに9年以上かかる

・現在の疎空間は、都市からの相当量の経済的な輸血によってかろうじて成り立っている

・疎空間を持続可能な空間にするということは、例えば災害発生時でも、外部からの支援に過度に依存せず、地域内のリソースで一定期間生存し、基本的な機能を維持できる力をもつということ

 

7つのマインドセットとアプローチ

1.ギャップフィル型ではなくビジョン設定型

・ギャップフィル型の課題解決とは、あるべき姿があらかじめ明確であり、現状とのギャップと構造的背景を分析したうえで対策を考えるアプローチ
・ビジョン設定型の課題解決は、そもそもあるべき姿(目指すべきビジョン)が不明確で、その見極めから始める必要がある場合に用いられる。最も重要なのは目指すべき状態の見極め
・バックキャスト自体は目標(あるべき姿)が明確な場合の計画立案方法として有効だが、本当に難しく価値があるのは「あるべき姿を描く」こと自体である点が見落とされがち

2.解くべき課題を同定することに価値がある

・解くべき課題を次々と把握し、言語化することが重要
・例えば「都市集中型社会に対するオルタナティブを作る」というゴールに対し、根源的なテーマは「疎である価値を守りながら、疎空間が存続しうる未来をつくる」というもの

3.エコノミクスから逃げない

・立ち上げた取り組みが継続しなかったり、持続的に発展しない場合、自然法則や経済原理に反していることが多い
・経済活動は自然界の中で行われており、この両者を統合的に理解することが重要
・自然法則との関係は「相互作用の法則」、「エネルギー保存の法則」、「エントロピー増大の法則」
・経済原理との関係は「臨界質量」、限界効用の法則」、「機会費用の原理」、「規模の経済」、インセンティブ構造」、「取引コスト」
・考えのポイントは「①現状と変化を数字で見る」、「②コストとリターンを見る」、「③空間全体としての系を考える」、「④バランスシートの意識を持つ」、「⑤ヘソとなる指標を見出す」、「⑥お金以前の目的関数を見失わない」

4.すべての価値をゼロベースで問い直す

・既存の枠組みから一度離れ、根本的な問いを投げかける必要があるが、ゼロベース思考は容易ではない

5.コインの裏返しではなく、本質的な刷新

・原因の特定と対策は必ずしも表裏一体ではない

6.系として考える

・①系全体の存在理由から考える、②出入りの全体を見る、③フィードバックの視点を持ち、絡み合う関係に注目する、④遅延の視点を持つ、⑤非線形的変化が起こりうることを念頭に置く、⑥テコとなるポイントを探す
・正負のフィードバックと遅延が複雑に絡み合うと、原因と結果が単純な比例関係ではなくる(非線形)
・小さな変化が突然大きな影響を与えたり、予想外の結果を生じたりする。
・システムが1つの状態から別の状態へ急激に移行する転換点をティッピングポイントという
・システムにおいても小さな介入で大きな影響を生み出せるポイントがある。これをレバレッジポイントという

7.目線を上げて楽しむ

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