バウビオロギー+建築+環境医学(B.A.U.)会議
バウビオロギー(建築生物学)は、建築の性能やデザインにとどまらず、人と自然、暮らしと環境の調和を追求し、生命や健康、心の豊かさまでを含めた“全体としての住まい”を考える学問です。
軽井沢でバウビオロギー+建築+環境医学(B.A.U.)会議が3日間開催され、学生数名と参加してきました。
バウビオロギーでは滞在時間が最も長く、心身ともに回復するための空間、つまり寝室領域、特にベッドの上の環境が最重要と考えられており、その場所の環境を適正に整えるために、指針が示されています。
今回は、ドイツからバウビオロギー測定士エリザベト・ソルトナーさんが来日され、特に放射環境について、さまざまな測定器を使った実践的なセミナーが開催されました。
最初に前橋工科大学の石川恒夫氏より、これまでのバウビオロギー研究会の活動について
続いて株式会社ウェルの山本太郎氏より、珪藻土を軸に調湿の考え方について
さらに日本電磁波協会の土田直樹氏より、今回のテーマである電磁波についての日本の取り組みや課題について
の基調講演がありました。
いよいよエリザベト・ソルトナーさんの講演が始まりました。ドイツの住まいづくりの特徴の話に始まり、
寝室領域で気を付けたい19項目(後述のSBM2024を参照)の内、特に放射環境についてそれぞれの原因と測定、対策が語られます。
日本では、ほぼ知られていない放射環境と身体との関係についての話なので、参加者からの質問が止まりません。

電磁波を計測する機械を用いて、さまざまな放射環境を計測します。

私も初めて見た高周波測定器における、Wifiや携帯の電磁波の計測は興味深かったです。
どのようにシールドするべきかなど、実体験で数値を確認できました。

13ページにわたりノートがびっしりです。

常に触れられていたのが、
・特にベットの上の環境を丁寧に整えること。
・そのために問題となる原因を計測によって探し、対策を講じること。
・測定ナシの対処はあり得ない。
・自然がお手本でありなるべく自然の状態を目指すこと。
・特に電磁波は近年の課題のため、健康との因果関係が明確でない場合でも予防原則(リスク回避)に則り被ばくを避けたいこと。
です。
今回は19項目の指針の内、6項目について学びました。
備忘録的に、私のメモから簡潔に原因と対策を書き出します。
A1.交流電場(低周波)
・低周波の交流電場の計測機器を用いてV/mの値で測定
・計測は測定機にアースを取る場合(日本は基本これのみ)とアースを取らずに電位フリーで計測する場合がある
・日本はアースがほとんど、取られていないため、機器やコンセント配線に電場が多い状態
・アースを取ることで電位を逃がすことで対策できる
・特にベッドの上は9ポイント計測し判断する
・理想は自然界に近い状態(アース付き計測で1V/m以下、アースなし計測で0.3V/m以下)
A2.交流磁場(低周波)
・低周波の交流磁場の計測機器を用いてnT(日本はmGが主流)の値で測定
・様々な状況で変動するため数時間は様子を見る
・問題があれば数週間計測をする(休日と平日、季節でも異なる)
・発生源の特定に周波数がヒントになる。
・高圧線や電線にも注意する。太陽光発電は日中に多い
・金属屋根のような大きい面の場合は避雷針のように磁場を集める効果も出るため注意
・電線はドイツでは地中埋設のためかなりシールドされているが、空中の場合は要注意
・ベッドの上で計測し、外部環境が原因の場合はシールドでも効果は薄いため、ベッドの位置を移動する対策は基本
A3.電磁波(高周波)
・高周波測定器を用いて計測(μW/m2)
・測定範囲の周波数に注意する
・計測の目的は問題となる原因を探し、クライアントとどのように対処するか考えること
・簡易的な計測器だと相対的に多いか少ないかしかわからないが、原因の特定には効果がある
・高周波は自然界にほぼ存在しないので理想は0を目指す(SMB2024では0.1μW/m2以下)
・電波元(たとえな携帯基地局)からの直接の放射以外にも反射や錯乱などがあり、離れていたりアンテナが見えないから低いとは限らない
・対策の最も良いのは、発生源をなくすこと。
・利便性を考えると無くしにくいため、Wifiを夜間は電源を落としたり、距離を取ったり、スマホを機内モードに設定したり、有線で使用するなどの対策を考える
・外部からの侵入は高周波のシールドメッシュ等で対応できるが、室内に発生源があると反射を繰り返し増幅されるため要注意
A4.直流電場(静電場)
・静電場を計測する機器でを用いて電圧(V)と放電時間(秒)を計測
・乾燥している手の甲で3回程度払って即時計測
・湿度環境の影響を受けるので相対湿度も計測
・ベッドのシーツや布団、衣服などの長時間接するものが重要
・合成繊維系の素材で多くの静電場が発生
・放電時間も重要で、10秒以下で放電が終わると帯電しにくい
・60秒以上もかかると常に静電気をため込んでいる状態に近くなる
・フローリングなどは表面仕上げが大切。ウレタンなどは静電場を溜めやすい
A5.直流磁場(静電場)
・簡易的にはコンパスで計測し、空中の安定した状態からのずれで計測
・理想は2°以下のずれに抑える(スマホなどは90°以上もずれる)
・ベッドの上で滑らせながら計測
・正確に計測するには磁場計で計測(μT)
・直流なので太陽光発電からも発生するが夜間は0になる
A6.放射能(ラドン)
・土壌から発生する。日本は世界的に見てもラドンは平均的に低い地域
・地域によっては、高い地域もあるため注意が必要
・特に地下室を作った場合、クラック(割れ)から侵入し、空気より重いため足元にたまる
・冬期い上がりやすい
・測定はFL+1mの高さで計測(床付近はもっと高濃度)
・測定は3~6か月程度の長期スパンで計測
・対策は適切に換気すること(ほぼ唯一の対策)
参考:寝室領域のためのバウビオロギー指針値(SBM2024)の項目
A:物理学的な場(電磁場)、波長、放射線
A1.交流電場(低周波)
A2.交流磁場(低周波)
A3.電磁波(高周波)
A4.直流電場(静電場)
A5.直流磁場(静電場)
A6.放射能(α線、β線、γ線、ラドン)
A7.地質学的異常(地磁場、地球放射)
A8.音波(空気伝播音、個体音)
A9.光(人工照明、可視光線、紫外線、赤外線)
B:有害化学物質、汚染物質、室内環境
A1.ホルムアルデヒド 及び他のガス状汚染物質
A2.溶剤 及び他の高~中揮発性物質
A3.化学殺虫剤 及び他の半揮発性物質
A4.重金属 及び他の関連有害物質
A5.パーティクル、繊維(微粒子、ナノ・パーティクル、アスベスト、鉱物繊維)
A6.室内環境(温度、湿度、CO2、大気イオン、換気、臭い)
C:真菌、細菌、アレルゲン
A1.カビ(及びその胞子、新陳代謝物質)
A2.酵母(及びその他の新陳代謝物質)
A3.バクテリア(及びその他の新陳代謝物質)
A4.ハウスダスト及び他のアレルゲン
SMB2024には19項目の指針があります。
一般的には、温度と湿度が気になると思いますが、それはほんの1項目(A6)にすぎません。
19項目、それぞれに数値によって健康に対して問題があるか、問題があるかが示されます。
ただ、あくまでガイドラインであり、自然の状態を目指し、あらゆるリスク低減に努める必要があります。

